2007年2月3日土曜日

問題点のズレに物申す

最近の論調に違和感を覚えたので、今話題の“機械的発言”に茶々を入れてみることにしました。

ネタ元として、柳澤厚生労働相の発言を報知の記事より抜粋します。
http://hochi.yomiuri.co.jp/topics/news/20070130-OHT1T00025.htm

◆柳沢厚生労働相発言要旨
なかなか今の女性は一生の間にたくさん子どもを産んでくれない。
人口統計学では、女性は15~50歳が出産する年齢で、その数を勘定すると大体分かる。
ほかからは生まれようがない。産む機械と言ってはなんだが、装置の数が決まったとなると、機械と言っては申し訳ないが、機械と言ってごめんなさいね、あとは産む役目の人が1人頭で頑張ってもらうしかない。(女性)1人当たりどのぐらい産んでくれるかという合計特殊出生率が今、日本では1.26。
2055年まで推計したら、くしくも同じ1.26だった。
それを上げなければいけない。

実際、この発言で問題なのは「機械」の部分でなく、
「あとは産む役目の人が1人頭で頑張ってもらうしかない。」
の部分だと思うのだが…。

#何だってマスコミは「機械」の部分だけを声高に叫ぶんだろね。
#問題の本質をあえて隠そうとしているとしか思えない。


この人の発言の主旨を手っ取り早く言うと、
「少子化の原因は、産む人が頑張らず、1人しか産んでないからだ。だから産む人に頑張ってもらって、特殊出生率をあげなきゃいかん」
ということになってしまうかと(少なくとも私にはそう読み取れた)


産む人が頑張れば、それで解決するのか?


否。子供は産む“だけ”じゃ済まない。
親となるからには、産んだ後も16年以上は確実に責任を持って守り、育てていく義務がある。あと、子供は「産む人」だけじゃ作れない。「産ませる人」もいなきゃならんし。
#だから、少子化問題は「女性」ではなく「夫婦」という単位で論じるのが正確なんだと思う。

要するに、現代の「夫婦」は子供を「産まない(作らない)」のではなく、
「産み育てていくのを躊躇っている」
という事じゃないのだろうか?

夫婦が子供を産み育てていくのを躊躇する原因は何か?

この問いに対する答えを理解していない限り、少子化に歯止めをかける対策なんか見つかりっこない。
出産・育児に躊躇する原因は、その夫婦により様々であり、ひとくくりにされることは無いはずで、ざっと思いつくまま書き出してみるだけでも…

・身体的な理由で産めない
 (不妊治療は金銭的・身体的に大変負担になるらしい)

・金銭的理由で産めない
 (出産費用は検診・交通費を含めると50万円を超えることも。
  一時金の前借制度がない健康保険はキビシイよね…)

・妻は産みたいのだが、夫が「子供は欲しくない」と言うので
 子供を作らない。もしくはその逆。
 (これは単に夫・妻どちらかの都合ですな)

・産んだ後に育児生活を営む術がないので産めない
 (出産後に半年以上、母体への介助が要るケースもある。
  専業主婦になれば良いとかいう単純な問題じゃない)

・世帯収入からして、子供は1人が限界という夫婦
 (子供一人当たりの養育費が1000万超の御時世だしなぁ)

・そもそも夫婦2人が食っていくだけで精一杯というケース
 (現在の20~30代に占める非正規雇用の存在を忘るるなかれ)

…等々。


まぁ結局、何が言いたいかというと、今回の発言は、
厚生労働省のトップが

「少子化の要因は女性の個人的な理由だけではなく、周辺の様々な状況が主な要因である」


という事実を認識せずに


「少子化は現代の女性の生き方と考え方に主な原因がある」


という発言(見方)をしている事を問題視するのが、スジじゃないかなぁと思うのです。


はっきり言って「機械」の発言はどうでもいいでしょ。
女性が「産む機械」だと言うのなら、男性は所詮「種を作る機械」ってことなんだしさ(笑)